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稽古場にて
恋唄綴り

第八章 「立ち稽古はじまる」

12月1日(月)
13:00〜 駅前のファミリーマートで珈琲を飲み、ゆっくり一服してから稽古場へ。移動の電車内は相変わらず自分の声を聞いている。マスクの下でブツブツと台詞を呟いたりもしている。マスクというやつは風邪予防の為だけにあるのではないのだなぁ、とても便利なものだと知る。
通して本読み。今日はまだ立たず、初めから通して読んでみる。暫しの休憩後、細かく読み合わせ、夜は初めて立ってみることに。唐突だったが準備万全。読みながら腰が浮く感覚もあったので望むところ。
簡単に、ではあるが、立つことで新しい風景が見える。立つといっても前半は座り芝居。どこで立ち上がり、どこでまた座り直すかは自分次第。心のままに。立ったり座ったりを繰り返す。
三日目にして早くも立ち稽古が出来たのも、美術の金勝浩一さんのお陰。忙しい撮影の合間を縫って稽古場に来てくれては、舞台装置を想定した空間を稽古場に作ってくださった。
この金勝さんは、僕の子役デビュー作品の装飾助手をやっていた方、その後何度か再会したものの久しぶりのお仕事となる。思いがけぬ再会。金勝さんの存在は心強い。芝居も真剣に聞いてくれる。演出の細野さん然り。まずはスタッフが最初の観客。この観客に何かを伝えられなければ本番は遠い。

前半の強弱、差し引き、そして相手にあまり対峙しすぎないこと。まだまだ必死さが余裕のない方向にしか向かっていない。初めての立ち芝居は思いのほか動けたが、動きすぎないこと。どっしり、ゆったり構えること。基本ベースは余裕の、不敵な笑みだ。
終了21時。どこも寄らずに帰宅。12月の空っ風が冷たい。

12月2日(火)
13:00〜 再び本読みに戻る。通しではなく、ブロック毎に。それぞれの役を掴むため。
僕の演じる風間に関しては、とにかく「歌舞く」ということがテーマ。いちいち人を見るのではなく、自分の世界に入り込み、妄想を、目先ではなく果てへ、果てへと馳せること、、、
稽古のだいぶ前から、このことは細野さんから課題とされていたこと。
そして集中力。これは個人的なテーマとして。稽古場での集中の仕方。気持ちの置き場を探すこと。
18時過ぎに終了。地元に戻り栄養補給。夜にきちんと食事を取らないと、いつものように痩せてしまいそうなので、普段はあまり遅い時間には食事しないが今回は別。食べることも大事。

12月3日(水)
13:00〜 最後の本読み。早く立ちたくてウズウズもしてくるが、戯曲と向き合う時間も大切かと…。
読みながら、後半になると集中が途切れることもある。自分の声に、台詞のつまずきに動揺してしまうこともある。何故言えないのかと、腹をたててる間にも次の台詞が控えている。素に戻り動揺している場合ではないのだ。このまどろっこしさを克服すること。その為にも、早く本を手放すこと!
夜、芦花公園の鳥将軍という名の居酒屋に初めて行く。翌日も稽古の為、軽めに呑もうと森谷、向山さんと三人で。話題はもちろん芝居のこと。こういう時間、映像の時はむしろあまり持たない。誘われれば断らないが、自分からはあまり誘わない。軽く誘うと快く付き合ってくれた二人に感謝、というか、二人とも呑みたかったのかもしれず…。軽くのつもりが日本酒まで辿り着く…。

と、12月前半の稽古の日々、台本裏に書かれていたメモを頼りに思い出してみるが、詳しいことまでは思い出せない。しかもこの時期、愛機GRで撮った写真はほとんどなかった。それほど余裕がなかったわけだが、連日の稽古は早くも白熱、充実していた。この週は日曜日まで休みなし。
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12月4日(木)
夕方まで立ち稽古。当然のことみんなが手探り。代役のパートもあるのでギクシャク。それでも稽古を重ねないと新たな課題も見つからない。
稽古後、明大前にある居酒屋にて、少し早い忘年会。お花見も主催してくださった古東さんらが呼びかけてくださった「スタニスラフスキー探偵団を成功させる会」に出席。細野さんを慕って集まった俳優やら関係者で大賑わいの宴。再演とは言え、ほとんどの人が「スタニスラフスキー探偵団」がなんなのか知らない訳だ。もちろん主演する自分のことも。自己紹介すると「普段はどんな舞台に出演されてるんですか?」と聞かれ、答えに窮する。普段は滅多に舞台はやらないのだけれど、映画監督、細野辰興さんの舞台だからチャレンジするんですよと言うと「じゃぁ頑張らないとね〜!」と言われる始末…。
そんな訳もあり、とても盛り上がった宴の隅で、心密かに燃えてきてしまった。この場にいる人が芝居を見たときに、どこまで圧倒させることが出来るだろう。圧倒させたい。窒息するくらい張りつめた空気の中で、芝居の醍醐味を存分に見せつけるのだ。主演俳優として形ばかりの挨拶もさせてもらったけれど、風間風に暴れ回りたいくらい、煮えたぎってもいた。甘っちょろい感傷や感動を与えるような舞台ではない、衝撃を与える。笑毒劇。観終わった後、しばらく席が立てないくらい、重たくて鋭い何かを突き刺したい。
言葉でもなく、態度でもなく、舞台の上で、役者として、風間重兵衛として、この日の自分の気持ちを、本番の芝居で感じてもらえたら…とだけ思う。

12月5日(金)
立ち稽古。最後まで通った。後半は、ところどころ台詞が抜けたが、とにかく最後まで辿り着く。
ここに辿り着かないと逆算も出来ない。到達して、やはり凄く大変な芝居なのだなぁと実感。
演劇のトライアスロン。幕が開いたら、ゴールのテープを切るまで休むことは出来ない。泳いで漕いで走って、喋る。喋って喋って、叫んで足掻いて喋り倒す。
前回公演も体験しているだけに、ある程度は全体像をイメージも出来ながら芝居しているが、今回はまったく新しい芝居にしたい。先入観を捨てること。前回はこうだったから今回も、という発想は出来るだけ捨てたい。でなければ再演する意味も、自分が風間を演る意味も薄くなるだけ。前回の風間役、大塚君の演技はナビにはなるが、なぞっていても仕方がない。特に後半部分はまったく最初から芝居を作り上げる気持ちで。後半主に絡む山田キヌヲ、森谷勇太が初演を観ていないのでむしろ今日は新鮮だった。
夜、借りていた「蒲田行進曲」を再見。この時代のダイナミックな演技。力強さが自分にも欲しい。

12月6日(土)
午前、インフルエンザの予防接種を受ける。未だかつてインフルエンザには罹ったことはないが念には念を。多少の副作用があるとは聞いていたが、移動の車中で気持ちが悪くなる。芦花公園の駅に着く頃には二日酔いのような状態になり、結局サミットのトイレで吐いてしまう。
それでも習慣的に南アルプスの天然水とバナナを買い稽古場へ。
13時開始。と共に通し稽古開始。細野さんの「よーい、はい!」の手拍子が鳴ったら、何があっても草野康太には戻らない。帰らない。帰ってきてはいけないのだ。
演じながら、体調が回復するのを感じる。というか、感じなくなるのを感じる。これで良し!
草野康太はいらない。風間重兵衛、かく語りき。そしてこの風間を演じるもう一人の人物、このキャラクターが、来週以降の新たな課題となってくる。
体調不良も含め、すべてが本番へのリハーサルとなる訳だ。通して稽古する中で、台詞に自信がない箇所も明解に。明日は映画のシナリオを読み込むことと、最後の台詞の復習にあてたい。
12月第一週、ハイペースにて終了。とは言え、本番はまだまだ遠い。。。

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舞台「スタニスラフスキー探偵団」を経ての、映画「貌斬り」は絶賛編集中。
この文章は、その完成した映画を、全国各地の映画館で観てもらいたい一心で書いてみようと思ったものです。
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