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稽古場にて 美術・金勝さん(左)と細野監督(右)
恋唄綴り 

第九章 「一進一退」

立ち稽古に備えて靴を買った。
稽古だけでなく、本番でもそのまま履いて使えるようにと、単なる稽古靴ではなく底が柔らかいウォーキングシューズを買った。その靴に慣れることも重要だった。舞台狭しと動き回るのだ。裸足に近い感覚に慣れるまで、稽古からその靴を使っていこうと思った。
稽古に備えて帽子も買っていた。前回の風間役との差別化も兼ねて、ハンチングではないハットを用意していた。これまた慣れる意味も込めて、本読みの段階から被っていた。

12月11日(木曜)、連日行われていた舞台「スタニスラフスキー探偵団」の立ち稽古は中断され、映画「貌斬り KAOKIRI」の顔合わせ・本読みが、舞台稽古と同じスタジオで行われた。
舞台の登場人物はもちろん、舞台には登場しない、映画パートのみに出演する木下ほうかさん、佐藤みゆきさん、畑中葉子さんらが加わり、稽古場の空気もガラっと空気が変わった。
舞台のこと、自分が演じる風間重兵衛のことで頭がいっぱいだったが、そう、これは映画「貌斬り」へと至る序章なのだ。この映画「貌斬り」でも、僕は主演として尾形蓮司という俳優の役を演じることとなる。つまり俳優である草野康太が、「俳優役」を演じ、その「俳優役」が舞台では「風間重兵衛」という映画監督を演じ、もっと言えば、その映画監督が舞台上のストーリーの中である実在した俳優の役をも演じるという構成。当然のこと、舞台公演中は毎日カメラが回る。カメラマンの道川さんは舞台の登場人物の一人として、僕らの芝居をカメラで捉えていく。これが映画「貌斬り」の挑戦。そして自分の挑戦。
この日は、初めての本読み。舞台シーンがそのほとんどを占めるとはいえ、初めて尾形の声をも出すことになる。手探りのスタート。
尾形という役は、風間を更にダークにさせていった様なイメージを持っていた。この二役も音色を変えて演じなければならない。本読みだけに「声」での表現が難しかった。
この本読みは参考までに、また録音しておいた。後日聞いてみると、「声」の差別化という課題はまったく解決されてなくて、自分で出している感覚とはほど遠く、まるで音色を感じられなかった。技術的な問題もあるかもしれないが、この時点ではまったく駄目。映像俳優が久々の舞台に立とうとして、必死に力んでいるだけ。空回り。

連日の稽古を、ただの稽古としてではなく、自分が風間重兵衛に成りきることで、その稽古の積み重ねによって、尾形連司という俳優像が少しずつ構築されていけばいいと、どこかで思っていた。
そもそもあまり好きではない稽古を重ねることで、何かしらの変貌が出来ればと…。だから稽古は本気だった。流したり手抜きで稽古出来るほど舞台に慣れてはいない。とにかく毎回本気で。本気で臨まなければ発見がない。なので、しんどく思う時もなくはなかったが、毎日の稽古を気持ちだけは本気で臨んだつもり。
通し稽古の前は本番さながらに栄養ドリンクを補給した。公演中を想定して、水の補給量も本番のつもりで計っていた。夜7時、3度目の通し稽古が始まる前に、その日3本目になるリポビタンDを手にすると、演出助手で黒子役の日里ちゃんが近寄って来て「早死にしますよ」と悪戯っぽく笑って助言してくれた。無意識のうちに手にしている特効薬に頼っている自分が、一瞬だけ哀れに思えた。

「演技を見せてくれ」と細野さんは要求する。「演技で魅せてくれ」とも。
最近よくある「演技をしないでください」的な演出とは対極にある。日常的な、感情を抑えた芝居ではない、言葉は古いが大芝居。躊躇している場合ではない。大向こうに、想いを馳せる。
日頃抑えている感情を煮詰め、圧縮し拡大させるのだ。その感情や意識の飛躍を体感したい。
俳優だから、演技するのだ。演技をしない演技をする為に俳優になったのではない。思う存分、演技の妙を、技を、舞台の上で表現するのみ。映画監督、細野辰興の要求は、シンプルで重厚。
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振り返ってみると、立ち稽古が始まり、映画「貌斬りKAOKIRI」の本読みを挟んだこの一週間あまりの稽古期間が、一番じれったくてしんどい時期だったかもしれない。
覚えているはずなのに抜けていく台詞。揃わないキャスト。あたたまらない芝居。
本気でやろうと思えば思うほど、必死さが空回りし、余裕なくては真面目マジメな芝居になっていってしまう。明日はこうしてみようか? なんてことも思うことなく帰宅すると撃沈。夢の中に、芝居が登場することになってきたのもこの時期から。夢の中でも台詞を喋っていた。
写真もメモも、この時期はほとんどない。よく覚えているのは、全然手応えの得られなかったシーンを助監督役の森谷勇太と居残りで自主稽古したときのこと、本物の助監督、有馬くんが快く稽古場を使わせてくれ、尚かつ山田キヌヲちゃんも付き合ってくれた。三人で役を入れ替わらせて本読みをしてみると、相手の台詞だけでなく、自分の台詞の新たな一面に気付かされることもあった。
猪突猛進、だけでなく、ちょっと小休止してみたり、たまには自分の背中や足の裏まで意識を向けてみることも必要なのかもしれなかった。

ちょうどこの時期、二日だけ映像の仕事が入った。これより後の時期だったら、当然断るべき仕事なのだったが、合宿を控えている今の時期ならばと、リフレッシュも兼ねて稽古をお休みさせてもらうことにした。一旦リセットしたい。偽らざる心境でもあった。
本音はどうかわからないが、撮影に出向くことを快諾してくれた細野さんと、合宿前に一度だけ二人きりで呑んだ。これまでのこと、これからのこと。課題と挑戦を再確認。演出家からというより、アスリートに付き添うコーチのような助言も頂く。
監督であり、演出家でもある細野さんではあるが、僕もまた、細野さんに細かいことは聞きたくもなくなっていた。何を要求しているのかは自分でもわかっているつもり。その突破口を開く為のヒントはいつももらっていた。後は自分次第。それが細野さんとの勝負であり仕事。
二日間の撮影と、二日の休みを経て乗り込む合宿で、まずはその兆しを見つけたい。

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舞台「スタニスラフスキー探偵団」を経ての、映画「貌斬り」は絶賛編集中。
この文章は、その完成した映画を、全国各地の映画館で観てもらいたい一心で書いてみようと思ったものです。
映画「貌斬り」はモーションギャラリーサイトにて、劇場公開を支援していただける方を募っています。良かったらサイトの方もご覧になっていただければ幸いです。募集も残り30日あまりとなってきました。
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Tommyさん、森さん、ご支援ありがとうございます!
劇場で観てもらえる日を、僕も楽しみにしています。。。

Comments

ともこ | 03.26.2015 19:11
キューっと胸が締め付けられる、、このお芝居にむかう康太くんの迷い、悩み、痛み。また成長するためのひとつの階段、ひとつの道なんだとおもうのは、まだ先か。これから長い役者人生、まだまだ未知の世界がある、、、かもね。悩み苦しんで遊んで楽して草野康太という俳優のすべてになる。康太くん!まだまだいくぜぃ!!

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